タイ社会やタイ人の行動原理の単位は「個人」である。
日本のそれが集団的と言われるのと大きく異なる。具体的例を上げると、
最近日本の新聞によく出ている「談合」は、日本人の集団主義を
よく表す商習慣と思う。この習慣はタイではうまくいかないのは
確実である。数社間で談合を行っても、いざ入札となると約束を破る
会社が必ず出てくるに違いない、集団的利益よりも自己利益を
優先するのが普通であるからだ。もっとも、破ってもタイではその
業界で村八分にされることもない。政治の世界でも、政党自身の
集団性はきわめて低く、政治家は政策上のくい違いはなくとも
個人的な利益配分を求め、離党、移党を繰り返す。
会社の仕事においても、日本の場合は「誰かがやるだろう」と
思っていると、ほんとうに誰かがやり大抵問題ない。不良が出やすい
(又は過去に出た)ので気を付けろと情報を流せば、皆が気を付け
言い替えれば集団で改善し、別に責任を追求したりドキュメントを
書かなくともいい物が出来る。
個人主義においては「誰かがやる」と期待していても、たいてい
誰もやらない。
個人主義も別に悪いことではなく、仕事や責任の範囲を
明確に示せば確実にそれを実行し、製造としてはいい物が出来る。
ただ日本人から見ると、くだらないと思われることもいちいち
聞いてくるので「かってにしろ」と言いたくなることがある。
まぁ、ここは日本じゃないグッと堪えて親切に対応しよう。
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タイ人の気質よく表す言葉に「マイぺンライ」がある。日本語訳では、
・どういたしまして・かまいません ・何でもないです ・平気です
・気にしません ・たいしたことないです
などがあり、いろいろな意味を持っている。
例えば、ある家のメイドがその家の食器を落として割ってしまった時、
その家の主人が「マイぺンライ」と言っていたわるのは普通であり
理解出来る。
しかしメイドの方から一方的に 「マイぺンライ」と言うこともある。
この場合は「気にしないで欲しい」という意味らしいがどうもこの
言葉の使い方と本当の意味は日本人には理解できない。
なお、本当の意味は理解していないが、タイ人がよく使うので自分も、
何か聞かれると特に問題がない限り全部「マイぺンライ」と答えている。
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タイ人の就職に対する考え方は、転職により職位や給料が上がる
方式である。したがって会社に対する帰属意識は低く、会社で
おもしろくないことがあるとすぐ次の職を捜し、現在より給料が
高ければ移るそうである。
現実に日本へ10人ほど研修に出したが1年半で全員辞めた話や、
ワ−カ−の転職率が年30%以上の話はタイではよくある。
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日本の会社は特に決まりはないが、一般的に終身雇用である。
タイの場合は転職して職位・給料が上がるのが一般的で、
日本のように「自分の職場は自分でよくしよう」という考えは低い。
したがって、人間関係がうまくいかず職場の雰囲気が悪いと、
良くするより別な会社を選ぶようだ。
なお職場の人間関係をよくするため、会社以外の付き合いとして
よく夕食パ−ティ−を開いた、始めの1年半はテクニシャン以上の
メンバ−で月1回以上行った。またワ−カ−を含めた行事としては、
1年に1回製造部門のみで1泊2日のバス旅行を実施している。
これらはタイ人自身で企画実行し、日本人は主に資金供給係を担当して
いる。
また、朝食・昼食は従業員食堂で、タイ人と同じメニュ−を
一緒に食べており、これも日本人とタイ人の一体感を高め、
人間関係向上となっている。
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間違いを犯しても素直に認めないのは頭にくる。しかし、これには
下記の背景がある。
大多数の国は、契約思想を重視する社会である。そこでは自分の
誤りを認めることは、契約に基づきペナルティ−を受け、
場合によっては契約の解消(つまり解雇)につながることを意味する。
したがって簡単に認めないし、自分の立場を弁護し、
起きた問題に対して何故に自分に責任がないかを弁解する傾向が
強い。
日本では、率直に自分の間違いを認め、反省する正直さが評価される。
どうもこれは日本人が特殊で、タイ国ではそれは期待しない方がよい。
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中南米に出向していた人から聞いた話では、ラテンアメリカ系の
女性は底抜けに明るく職場もミニスカ−トであるし、たまにタッチ
することにより自分が認められていると喜び仕事をよくやるそうである。
タイ女性にはそのような気質はまったくなく、一般的なタイ女性は
触ってよいのは恋人だけだそうである。過去に出張者でうっかり頭とか
肩に触れ、あの人は「タル−ン」(スケベ)だと全女性から非難された人が
いた。飲み屋以外では女性にタッチしない方が無難。
なお、その他の行為として次の点は注意した方がよい。
・人を蹴飛ばすこと、又は蹴飛ばす仕草(過去に足を組んで
タバコを吸っている時、なにげなく足を振っただけで、前に座っていた
タイ人より悪い仕草と注意されたことがある)
・人を指さす行為(これも歴史的背景があり昔裁判で長老が指をさして
犯人を決めたとのこと)
・人をまたぐ行為(タイ人は寝ている人でも跨がないそうだ)
・頭を触る行為(人には「クワン」と言う守護霊が宿っており、
このクワンが体外に飛び出すと人は病気になり死んでしまう。
頭はクワンの宿る最も大切な部分<一種の迷信>)
・僧侶へのタッチ(女性が僧侶の身体に触れるとそれまでの修行が
すべてダメになる)
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タイ人の気質として「非常に自尊心が高い」を上げることができる。
これは歴史的に見てもアジアで数少ない植民地にならなかった
国であり、また国内の衣食住も安定していること等が影響していると
思われる。したがって、タイ人の自尊心を傷付けると、それまで
努力して築き上げた信頼関係も全て失うことになる、と
本に書いてあった。
本件については、大勢の前で一人を叱らない等多少は気を付けたが、
「メンツをつぶされれば頭に来る」のはタイ人も日本人も同じであり、
日本人と接する態度と同じ様に対応しタイ人だからと
特に意識することはなかった。ただし相手の「自尊心を傷つけ」
それにより相手が自己退社したケ−スはある。以下その例を記述、
これは【み】項に出てきたエンジニアのケ−ス。
エンジニアの一人は今後トラブルメ−カ−になる素質十分で、
会社としては首にしたかったが特に就業規則違反をすることもなく
チャンスはなかった。そのため少し期間はかかったが、12月の
ボ−ナスの査定において同じ学校を卒業した同期のエンジニアと
大幅に差を付け、相手の誇り高き自尊心を傷つけることにした。
2人とも同じ検査エンジニアで入社2年と日が浅いこともあり、
評価の差を付ける理由は苦労したが、ともかく最高と最低に付けた。
結果はボ−ナスを受け取った翌日から求職活動を始め1カ月後には
辞めて行った。
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当社のオペレ−タ−の平均年齢は21才と若い、男女間の問題も
いろいろあるようだが詳しいことは知らない。特に解らないのが
結婚の件で、
結婚しているのかいないのか、または何時結婚したのか
トンと見当がつかない。
どの子が結婚しているか聞いたことがあるが、半年程たってからまた
別の人に聞くと前回聞いた内容と違い、何をもって結婚していると、
言うのか、それ事態が分からなくなった。階層の高い人のことは
判らないがワ−カ−クラスの結婚というのは、2人息が合ったら
一緒に暮し、そのうち子供でも出来たら戸籍上の籍を入れる、
というのが一般的だそうだ。
ある時タイ人に男女間の付き合いが乱れているのではないかと
聞いたら、答えは「タイ国スタイルの恋愛は現代的でモダンである」
だった。
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ほとんどの月の温度は30度以上ありタイは暑い国である。
それでも12月1月は朝方は23度程に下がり長くタイに住んでいる
者にとっては寒い(毛穴が開いているようだ)。また、この時期は
冬物が売りに出され、女性はセ−タ−等を着ておしゃれを楽しむようだ。
工場の中も寒いので(寒いといっても23度〜24度)私がク−ラ−を
切ると、知らない間に誰かがスイッチを入れてしまう。、そして
半数以上の人は寒いと言ってジャンパ−やセ−タ−を着ている。
なぜそれ程冷房を利かせるのか日本人には謎であり、これは人類学な
研究課題と思われる。
なお、車で重要なタイ人を接待する時、
「車内は寒い方が高級なもてなし」
とのことであり、寒くてク−ラ−を切る時は考えた方がよい。
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